工事概要

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工事概要

■私たちが施工したものは見えません?

 
坑井は、地上にはバルブが付属した坑口装置しか見えませんが、その下部には数千メートルにわたって井戸が掘られています。私たちが施工したものは見ることはできませんが、地中深くまで掘削した坑井は地下から石油・天然ガスや蒸気・熱水(地熱エネルギー)を採取する管路となっています。
 

■エネルギーから環境対策まで地下深部を利用

地下深部の開発利用には、地下に存在する石油や天然ガス、地熱エネルギーのみならず、天然ガス地下貯蔵、二酸化炭素地中貯留、深部地震観測、高レベル放射性廃棄物地層処分などがあります。坑井掘削技術は、これらの開発利用に合わせて、さまざまな技術の集合体として、進歩しています。

また、最近の掘削技術は、より深く掘削する技術だけでなく、垂直から掘削を開始した坑井を水平までコントロール掘削する「水平掘削技術」、掘削開始地点からより遠くまで掘削する「大偏距掘削技術」、より高温度部を掘削する「高温度掘削技術」などが目覚ましく進歩を遂げています。より安く、より安全に掘削するかということも重要な課題です。

当社では、石油開発井、地熱開発井、天然ガス地下貯蔵井、深部地震観測井、二酸化炭素地中貯留実証試験井、科学掘削井、石油実験井などの掘削を行っております。また、坑井にかかわる技術開発として、地震計多段設置工法や坑井封鎖技術開発を行っております。
 

 
 

石油・天然ガス井

国内における石油・天然ガス開発は、秋田県、新潟県、千葉県を中心に行われております。石油は我が国での使用量と比較すると微量ですが、天然ガスは国内供給量の約4%相当を生産しています。天然ガスは燃焼時の熱量が大きいだけでなく、二酸化炭素の排出量が石油や石炭と比べて少ないという特徴があり、地球にやさしいクリーンなエネルギー資源として注目されております。

水溶性天然ガスは、ガス層に共存するかん水に、炭化水素ガスが溶解している状態で賦存しています。坑井を掘削し、このかん水を汲み上げ、かん水からガスを分離して使用します。また、このかん水には、高濃度のヨウ素が含まれていて、これを精製したヨードは、主に化学・医薬関連製品の原料として利用されています。我が国は、世界の2大ヨード産出国の一つで、世界に誇れる地下資源です。

 

■石油・天然ガス井の掘削と仕上げ

坑井は、ロータリー式掘削により掘削され、一定区間の掘削が終了するとその区間にケーシングパイプという鋼管を挿入し、坑壁とケーシングパイプの間隙にセメントを充填します。掘削中は、泥水を循環して、掘屑の排除や泥水柱圧力より、石油や天然ガスの噴出を制御します。また、掘削装置には、暴噴防止装置(BOP)を取り付けてあり、緊急時に坑井を密閉することができます。
 
掘削が終了し噴出テスト(試ガス)で生産に移行できるガス量が確認されれば、チュービングパイプ(生産用鋼管)をセットし、地上には安全のためのバルブを幾段にも重ねたクリスマスツリーと呼ばれる装置(安全装置)が取り付けられます。石油や天然ガスは、チュービングパイプの中を通って、地上に上がってきます。

 

■天然ガスの生産フロー

クリスマスツリーから出た天然ガスは生産プラントへ送られます。生産プラントではガスに含まれる坑水・砂・油・炭酸ガス等、様々な不純物を取り除きクリーンな状態に調整をします。また、精製した天然ガスは、利用されるガスの熱量に合わせて、熱量調整も行います。INPEXの生産プラントは、安定供給のため24時間体制で天然ガスの需要量を監視し、一般家庭・大口需要家(工場)にガスを届けております。
 

 
 

地熱発電井

人類の発展と文化の歴史は、そのままエネルギー資源の開発の歴史であると言えます。現在、世界のエネルギー資源の大半は、有限資源である石油と原子力に依存しています。しかし、これからさらに人類が繁栄していくためには、無限の太陽熱、地熱といった自然エネルギーを積極的に活用していかなければなりません。地熱エネルギーは二酸化炭素ガスをほとんど排出せず、地球温暖化に影響の少ないエネルギーでもあります。
 
当社は、我が国で始めての地熱生産井となる松川1号井の掘削を施工して以来、地熱発電開発のための調査井、生産井および還元井の掘削工事を手掛けております。

 

当社は、1,000m~6,000m級の掘削機を保有しており、あらゆる仕様の地熱井の掘削が可能です。これまでに深度3,000mを超える地熱井を数多く施工し、掘削、仕上げに成功しております。また、深度が深くなるにつれ地下の温度が上昇しますが、坑内温度が300℃を超える坑井も数多く掘削した実績があり、大深度高温度掘削を行うことができます。

 

■地熱発電とは

地球の熱エネルギーによって発生する水蒸気を、坑井をとおして採取し、蒸気タービンを回して発電機を駆動して電気を得る発電方式です。また温度が低く熱水しか得られない場合でも、熱水でアンモニアなどの低沸点の媒体を沸騰させ、タービンを回すバイナリー発電方式もあります。
 

 
 

各種坑井と技術開発

■深部地震観測井と地震計多段設置工法

高感度地震観測は、車両の通行などによる人工的要因や風雨や波などによる自然的要因によるノイズの影響を避ける必要があります。このため、坑井を掘削し地下深部に地震計を設置する地震観測井が掘削されており、当社は深度2,000mを超える地震観測井を数多く掘削しております。
 
一般の地震観測井は、坑底部に地震計を一式設置する方式が取られていますが、原子力発電所の耐震設計の安全性能を評価するため、1坑井に複数の地震計を設置する観測井が必要となりました。当社は、地震計多段設置工法を立案し、深度3,000mの観測井を掘削して地震計の多段設置台座の設置を施工しました。

 

■二酸化炭素地中貯留実証試験井

地球温暖化を防止のため、二酸化炭素を地中に貯留する実証試験が行われています。この試験井は、二酸化炭素の注入及び地中での挙動を観測するため、ケーシングプログラム等は特殊な仕上げ形式となっています。
 
平成12年に新潟県長岡市の国際石油開発帝石㈱(現㈱INPEX)の岩野原基地において、CO2を帯水層に圧入するための圧入井を掘削し、平成13年、14年にCO2の広がり・移動状況などをモニタリングするための観測井を3本掘削しました。4本の坑井は、1基地より傾斜掘削技術を用いて掘削されています。

 

■科学掘削

当社は、平成15年9月より雲仙科学掘削プロジェクトの火道掘削井USDP-4の掘削作業を行い、平成16年7月6日に深度1,995.75mまで掘削し、掘削作業を終了しました。掘削作業は、坑井の傾斜方位のコントロールはもとより予定深度1,800mを深度1,995.75mまで掘削するなど、計画以上の実績を残すことができました。
 
採取したサンプルの中には、マグマの圧力により地層を割り進入したマグマから形成されたと考えられる「火山ガラス」や平成新山のマグマと考えられるものが含まれていました。

 

■リリーフウェル

蒸気噴出のため坑井周辺に立ち入れない地熱生産井の坑井周辺から噴出している蒸気を恒久的に封鎖するためのリリーフウェルを掘削し、鎮静化に成功しました。
 
レンジング技術を駆使して地下の既存ケーシングパイプの位置を確認しながら掘削を行うという国内初の試みで、地熱生産井に接近または接触させた後、セメント注入によって坑井を閉塞し、着工から約2年半経過後に無事終了しました。

【レンジング】ケーシングパイプはカップリング部に大きな磁極を持っており、磁気による地球磁場の乱れを磁気センサーで測定、解析することによってケーシングパイプとの距離および方向を特定するもの。